東京都大島町
 

2001年4月11日

静岡県熱海港から東海汽船に乗り、約1時間程で伊豆大島に到着します。椿と御神火で有名なこの小さな島で、自然エネルギーを武器にミネラルバランスにこだわった旨い塩を生産しています。

手の込んだ緻密な仕事と情熱、豊かな環境が自然海塩 「海の精」を育む。

黒潮が打ち付ける岸壁にそびえ立つネット式立体塩田。
 

間伏工場
 
 
ネット式立体塩田は、木造で造られていて外側は海からの強風から守るためのネットで囲われている。海水を汲み上げて噴射ポンプで内側のネットに吹き付ける。下に流れる海水を再び汲み上げ、何度もこれを繰り返し太陽と風の力で水分を飛ばし、塩分濃度を徐々に15%程まで高める。これを鹹水(かんすい)と言う。一番の悩みは、雨。自然エネルギーでせっかく時間をかけて塩分濃度を高めても、雨が降ればそれで薄まってしまう。天気予報と海を見ながら夜を徹して見守る。

雨や湿気が多い時季には塩分濃度を高めるのは難しいため、ある程度の鹹水が出来たら蒸気により熱を加えて一定の濃度に仕上げる。夏場は主にメンテナンスで追われるらしい。夏場は湿気が多いので鹹水を造るのは難しく、湿気のない冬場が効率よく鹹水を採取できる。
 
 
自然の力で得た鹹水をこの温室に運び天日による乾燥工程に入る。1畳程の大きさのテフロン加工された浅い水槽に鹹水を入れる。鹹水の状態から1週間から10日で結晶が現れる。最初に水面に薄い結晶が浮くがこれは、カルシウム。次第に結晶が成長し、塩が生まれる。完全に結晶化するまでは、季節によって異なる。
春:約20日 夏:約1週間 冬:約2ヶ月

母液の濃度をこまめに計測しながら海水の10倍近くなったら採取する。分離結晶しないように木ベラを使い丁寧に天地返しを繰り返しながら充分に混ぜ、切り込み、最後に手で揉み込む。

ここで最終的に完全天日塩「海の晶 (海の精 青ラベル)」が出来上がる。
年間6トンほどしか生産できない貴重な塩だ。

 


ある程度出来た鹹水(ネット式立体塩田で規定の濃度の鹹水が採取されないときなども含む)をタンクに入れ、蒸気により過熱して人工的に塩分濃度を高めていく。これを元町工場に運び、釜炊きをする。
 

元町工場
 
  間伏工場で採取した鹹水を元町工場に持ち込みいよいよ釜炊き行程に入る。

以前は、直火で炊いていたが熱効率の悪さと、ミネラル析出のバランスが難しいため、品質のばらつきが起こる。現在では均一な製品を造るためにボイラーでの加熱方式に変わった。

原鹹水を約一昼夜かけて煮詰めていく。
煮詰めていくに従って、
硫酸カルシウム → 塩化ナトリウム → 硫酸マグネシウム → 塩化マグネシウム → 塩化カリウム
といった順にミネラルが析出してくる。
煮えたぎったサンプルを取り出し、分析しながら釜揚げのタイミングを計る。
 
理想の分析値に到達したら平釜の蒸気を抜き釜揚げ体勢に入る
見事に結晶化した海の精となる真っ白な塩の元が姿を現す。
鹹水を含んだ塩の固まりが採塩樽に移し替えられる。後は手作業で掻き出す。
採塩樽に移されると塩の上に濾過用の布を沈める。過剰な硫酸カルシウムを除去するためだ。
数日間常温で放置し冷却される。 冷却とともに析出された硫酸カルシウムが濾過用の布の上にたまるのでこれを取り出す。
冷却された塩を脱水機にかけ、苦汁(にがり)と分離する。排水される液体は天然のにがりとしてタンクに運ばれ貯蔵し、豆腐の凝固剤として豆腐屋さんへの出荷を待つ。
 
脱水処理もただ水を切ればいいと言うものでもない。長年にわたり蓄積されたノウハウによりミネラルの量を決定する最終段階である。

鹹水を造り出すところから釜炊き、脱水処理という一連の行程の中できめ細かい分析が行われる。
海の精が、塩の中でも旨いのは適度なミネラルバランスを保っているからだ。


海水丸ごと結晶化させたものはまずい。
美味しくないのだ。
こうして、年間約350トンの海の精を生産する。
 


小さなかごに入れられたセラミック製の玉。 これは、釜炊きの時に入れる。蒸気による釜炊きは均一性に優れてはいるものの、良すぎてもダメ。この玉を入れることにより薪を熱源にした自然に近い状態を造れると言う。


                         外に並ぶ苦汁の貯蔵タンク


製品化された業務用の海の精。
海の精を使った味噌・醤油を醸造する蔵へ出荷される。
脱水処理された海の精は、ミネラルの均一化を図るために一度ミキサーで攪拌される。
目視による厳しい検査をしながら、一袋ずつ丁寧に詰められる。 詰めた袋を検量し、空気をしっかり抜く。真空状態でパッキングする。
 
昔は、木の棒でたたきながらのしていたが、現在は機械で平らにのばしている。

包装作業所は間伏工場内にあり窓の外にはネット式立体塩田がそびえ立つ。
目の前の無限な原料をもとに様々な緻密な作業を経て大きな海を一つずつ丁寧にパックしている姿には不思議な魅力を感じた。

恵まれた原料を生かすも殺すも人の知恵と技を必要とすること。
何もしない、何も加えないのが自然で全て良いという考え方は違うと思う。手間暇かかるからこそ逸品が生まれる。農業の自然農法だって何もしないと言うものではない。人間だって教育やしつけが必要だ。


丸ごと自然をうたい文句に販売している商品もあるが、美味しくなければならない。

JTの食塩に猛反対した有志の方々あってこそ今甦る現代の自然海塩。純粋であればあるほど危険であるという法則を信じ、訴え続けるという長年の努力が、ここに、伊豆大島の豊かな海の結晶として全国の人たちに支持されている理由を垣間見ることが出来た。
sea041■海の精・赤ラベル250g
価格480円 個数
  
sea059■海の晶・青ラベル240g
価格750円 個数
  
sea042■海の精・赤ラベル500g
価格970円 個数
  
 
帰りに伊豆大島特産 伝統的な椿油の製油所 を訪ねてきました。

 

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